Greece’s Caretaker Administration:ギリシャの暫定政権

ギリシャは連立政権に向けての協議が決裂し再選挙が決まったことで、同国のユーロ離脱の可能性は一層高まってきました。
当面の対応として、来月に予定されている総選挙まで暫定政権が組閣されます。

英語ニュースでは、caretaker administration とか caretaker cabinet という用語が使われています。
1月20日のコラムでcaretaker と caregiver はどちらもケアを提供する側を指すと書いたばかりなので、この「caretaker」政権がどう和訳されるのかとても関心がありました。


ここ数日の新聞では、caretaker administration は、「暫定政権」と意訳されているようです。
確かに、caretaker を「介護政権」と直訳したのでは、却って何を指しているのかわからなくなってしまいそうです。
それよりも、原文のcaretaker にこだわらずに「暫定」を強調した方が読者にとってはやさしいのかも知れません。


同じギリシャ関連で、5月18日付けウォールストリートジャーナルウェブ日本語版に以下のようなサマリー記事を見つけました。

Returning to a national currency after more than a decade of using the euro and having its money managed by the ECB would catapult Greece into a financial, legal and political no-man's land.

 ギリシャが10年以上使っているユーロから離れて独自通貨に戻り、ECBの監督からも離れると、同国は金融、法律、政治的に危険な無人地帯に放り出されることになる。

ここで言う「無人地帯」とはどういう意味なのだろう、その中身の見当がつかなかったので調べてみました。

どうやら、語源は第一次世界大戦の頃に遡るようです。(ウィキペディア no man's land参照)
誰の領地(日本流に言えば「藩」)なのかを巡って紛争が起きており、その政情不安、相手からの攻撃を恐れて誰も住んでいない地帯を「無人地帯(=no man's land)」と呼ぶのだそうです。オックスフォード英語大辞典によるとno man's landが初めて使われたのは1320年のことのようですが、一般に広く使われるようになったのは1914年第一次世界大戦の時だそうです。

無人地帯」は、両軍の激しい攻撃の対象になっている地帯で、わずか数メートルの幅(第一次世界大戦)のこともあれば、数十キロ(冷戦時代のキューバ)の幅のこともあったようです。

いずれにしても「無人地帯」とは「非武装地帯」の反対の状態を表わすように思えます。


さて、ギリシャが「無人地帯」になるとはどういうことなのでしょうか。ユーロ圏に残るかドラクマに戻るのかの整理が付くまで、誰もギリシャにお金を置いておきたくないということなのでしょうか。もうこの数日で多額の預金引き出し、資産の現金化が始まっているという報道もあります。