Collapse, Compress, Expand, Decompress   圧縮と解凍

以前にも Collapse は訳し難い単語であると書いたことがあります。

辞書を引くと Collapse
崩壊する、倒壊する、という意味が並んでおり、そこから派生して、衰弱する、失敗する、挫折するなどの訳語が出てきます。
潰れ、崩れ落ちるというニュアンスはとても良くわかるのですが、それがなぜかうまく日本語にできないのは、ITやコンピュータ用語として使われた場合。


例えば、ディレクトリのツリー構造をイメージしてみてください。
横に(+)マークがついていれば、その項目はその配下に小項目があるという意味ですよね。
その場合、ツリー構造は collapse されているのです。日本語ではおそらく「折り畳まれている」と言うのでしょう。
その(+)をクリックすると小項目が表示され、記号は(ー)に変わります。
これは折り畳まれていたツリーが「広げられた」わけです。
その場合には expand を扱います。

折り畳み」も「広げる」もいざ、漢字二字の熟語で表そうとするとなかなかうまく行きません。
それが私の悩み。

折り畳み傘も a collapsible umbrella


一方で、「圧縮する」には「解凍する」という相棒が居り、「圧縮」「解凍」ときれいに熟語になるのです。
圧縮してデータ量を減らし、転送効率を上げる。目的地ではそのデータを解凍して元のデータが読めるようにするという技術が圧縮技術です。

もっとも物理法則によると、水は凍らせると体積が10%増え、溶かすと10%減るので、解凍すると体積(データ量)が減るはずと言うのは屁理屈でしょうが。


Compressに対する解凍は meltではなく、decompress を使います。
この decompress はこれまたおもしろい単語で、スキューバダイビングをした後、水面に戻ってくる時の肺の減圧が decompress です。深いところにもぐって、水圧で圧縮されていたもの(肺)が水面に近づくに従ってその水圧が下がる(減圧)というわけです。
同じように、プレッシャーがかかっていた状態が過ぎ去ってほっと一息つく時も decompress と言えます。
I am going to decompress at the beach this weekend.

ね、言われてみると、プレッシャーが無くなる ⇒ 減圧 ⇒ decompress ⇒ リラックスする という連想がわかるでしょう?


Access、aggregation、coreという三層構造になっているネットワークを二層にすることによってシンプル化しようという提案があります。この場合も to collapse 3-tier network to 2- tier と言うのです。三層のネットワークを「潰して平たくして」二層にするということです。
こういう場合は、日本語でなんと言えばよいのかいつも悩んでいます。(当面は「ネットワークを二層にシンプル化する」と意訳していますが。)


会社組織もこの collapse がよく使われています。
日本の会社は、主査、係長、課長、部長、本部長、統括部長、常務、専務、副社長、社長など管理職にかなりの階層があります。一方で、アメリカの企業は(もちろん例外はたくさんありますが)、主査あたりから課長までは Manager で一括りになっていたりします。取締役会は社外取締役が半分以上で全体的な人数も日本の企業よりはずっと少ないことが多いので、専務、常務、平取締役のような区別がないです。
そんな時に、US corporations have more collapsed organizations. (米国企業は平たい組織になっていることが多い)と言います。


英語でのニュアンスはとてもよくわかるのに、適当な日本語がなかなか見つからないのがこのcollapseです。