PTTとTier−1キャリア 死語になりつつある通信用語

今日は取りとめのないブログになってしまいそうですが、備忘録ということでいくつかの単語をメモしておきます。
というよりも、死語になってしまったかと思われる通信業界用語を懐かしく思い出している日記でもあります。

PTTはPublic Telegraph & Telephone Company の略。
各国の電信電話会社の多くが公社または独占企業であった頃は、その電話会社を指してこう呼んでいました。
その状況も1984年のAT&T社の分割やNTTの民営化に代表されるように80年代後半から次第に変化してきたのです。


通信の自由化に伴い、NTTに対抗する通信事業者が設立され、NCC(New Common Carrier)と呼ばれていました。当時は第二電電(以後、KDD+IDOと合併にDDI(現KDDI)などという会社があったわけです。アメリカでは元々地域通信を提供していたATT(ベル系地域事業会社)やGTEをincumbent carriersと呼んでNCCと区別していました。
当時は文脈によってはincumbent carrier が第一種事業者と同義語であると見なせる場合が多かったのです。(GTEは現在はVerizonになってます。)


日本では2004年3月31日までは第一種・第二種電気通信事業者の区分があり、一種事業者は伝送路設備・伝送交換設備・付帯設備を所有する事業者で、二種事業者は自前の設備を所有せずにサービスを提供する事業者を指していました。
当時はこの一種事業者をClass 1 carrier(またはType 1 cattier)、二種事業者をClass 2(Type 2)と訳したりしていました。2004年4月1日から第一種・第二種の区分はなくなってしまいましたが、移動体通信事業においてはそのコンセプトは残っています。自社網を保有する移動体通信事業者はMNO (Mobile Network Operator)、一方で伝送設備をMNOから借り受けて自社ブランドでサービスを提供する事業者はMVNO(Mobile Virtual Network Operator)。


アメリカ英語にもTier-1、Tier-2という類似の表現があります。このTierは階層を意味する単語で電気通信の専門用語ではありません。通常はATT、T-mobile、Verizonと言った大手の通信事業者をTier-1と呼ぶことが多いです。(以前のClass-1/Type-1のような設備保有の有無もその定義に含まれているのかは未確認ですが。)


もう一つ死語になりかけている通信用語はPSTN(Public Switched Telephone Network)。これも統合IP網が登場する前、音声網とデータ通信網が分離されていた頃の名残ですね。(当時のデータ通信網は一般加入者向けというよりは法人加入者用でしたから。) Wikipediaによると2025年を目処にNTTのPSTNは廃止となるそうです。


最近の電話機は停電すると使えなくなってしまうタイプのものが多いですが、NTT電話機は電話線から給電しているので停電しても使えるのをご存知でしたか? 家庭に一台くらいはこのNTT電話機があった方がいざという時の備えになるかも知れません。


先日、伝送系の方とルーター系の方の議論に陪席する機会がありましたが、レイヤー0、1、2、3の統合化が今後のトレンドになるということです。両者めざすところは同じなのですが、バックグラウンドの違いがアプローチの違いに明確に現れていて、とても興味深かったです。伝送系とルーター系の人達は文化だけではなく用語も似て非なる部分があります。ネットワークの統合化は、技術的な側面よりも人間的側面(担当者の組織の統合)の方が課題が多いというのを聞いて妙に頷いてしまいました。